【睡眠中のよだれに要注意】よだれの原因に潜む危険と対策法をご紹介!
朝起きたときや居眠りから起きたとき、口周りがよだれでビチャビチャだったといったことはありませんか?
寝ている時の口内によだれがあること自体は正常ですが、実は「よだれが口外に出る」ことには、大きな危険が潜んでいます。
「疲れているんだろう」と何気なく放置していると、睡眠の質を低下させたり、病気にかかりやすくなるといった悪影響を及ぼす可能性があるのです。
この記事では、よだれが出てしまう原因と対策についてご紹介します。
1. 睡眠中のよだれの役割
外に出てくると不快なよだれですが、よだれは身体にとって重要な役割を持っています。
睡眠中のよだれには、歯や歯茎についた食べかす等を洗い流す浄化作用や、虫歯や歯周病菌等の細菌の増殖を抑える殺菌・抗菌作用があり、虫歯や歯周病、口臭の悪化を抑制し、口内の健康を維持してくれます。
また抗菌作用によって、外から取り込まれる空気に含まれる細菌の侵入を防ぎ、身体の免疫力を高めてくれる効果があります。
睡眠中のよだれには、口内の健康を維持し、虫歯や歯周病の予防、口臭の悪化を抑制する効果がある。
よだれの持つ抗菌作用は外からの細菌の侵入を防ぐので、身体の免疫力を高める。
2. よだれが出る原因は口呼吸
寝ているときによだれが出る主な原因は、鼻詰まりや何らかの原因で鼻呼吸ができず、口呼吸になっているからです。
口呼吸だと口が開いているためによだれが外に垂れ出てしまいます。
上述したようによだれには重要な役割がありますが、口外に出てしまってはその恩恵を受けられません。
それに加えて、睡眠中は副交感神経が優位になることでよだれの分泌量が少なくなりますが、ただでさえ少ないよだれが口呼吸によって蒸発してしまうので、さらに減少してしまいます。
また、口呼吸は口の乾燥だけでなく様々なデメリットを発生させ、健康被害も引き起こす危険性を持っているので、早めの対策が必要になります。
よだれは、その危険を知らせるサインといえるのです。
以下に、口呼吸の危険性と原因、その対策法についてご紹介します。
よだれが口外に出るのは、口呼吸で口が開いていることが主な原因。
口呼吸には口の乾燥のほか、身体に様々な悪影響を及ぼす危険性がある。
3. 口呼吸の危険性
人が普段行う呼吸は本来「鼻呼吸」が正常です。口呼吸を続けていると、身体に様々な悪影響を引き起こす可能性があります。
3-1 睡眠の質の低下
鼻呼吸には、冷たい外気を取り込んで鼻を通る時に脳を冷やすという役割を持っていますが、口呼吸では脳を効率よく冷却することができなくなります。
また、口呼吸は鼻呼吸と比べると、1回の呼吸で取り込む酸素の量が少なくなります。
加えて、口を開けたままの状態で寝ていると舌が重力で喉の奥の方へ下がり気道を塞いでしまうため、いびきを起こしやすくなることや、ひどい場合は「睡眠時無呼吸症候群」になるリスクが高まります。
睡眠時に口呼吸が長く続くと、上記の要因から脳が十分に休まらず、睡眠の質が下がり、疲れがとれない、日中の眠気、ストレスの増加といった弊害を起こしてしまいます。
特に睡眠時無呼吸症候群は命に関わる恐れもあるので大変危険です。
3-2 虫歯や歯周病、口臭の悪化
よだれには浄化作用や殺菌作用がありますが、口呼吸で口が乾燥しよだれの量が減少するとこれらの効果を得られず、口内に雑菌が残りやすく、そして繁殖しやすくなるので、虫歯や歯周病のほか、口臭の悪化が起こりやすくなります。
3-3 風邪や感染症にかかるリスクが高まる
鼻の穴には鼻毛や粘膜があり、これらは呼吸によって吸い込んだ空気中に含まれる細菌やウイルス、花粉等の不純物を通しにくくするフィルタのような役割を果たしています。
しかし、口呼吸では鼻のフィルタ機能を介さずに空気が口の中に入り、細菌やウイルスが直接侵入してくるため、風邪をひきやすくなったり、感染症にかかったりといったリスクが高くなります。
口呼吸をしていると効率的な脳の冷却、酸素供給ができなくなるため脳が休まらず、睡眠の質が低下してしまう可能性がある。
口呼吸によって口が乾燥すると、よだれの持つ口内の健康維持機能が上手くいかず、虫歯や口臭の悪化が引き起こされる。
口呼吸は口内に直接空気が入ってくるため、空気中に含まれるウイルス等が侵入しやすく、風邪や感染症にかかりやすくなる。
4. 口呼吸になる原因
4-1 鼻詰まり
まず考えられるのが、風邪や、花粉症等のアレルギー性鼻炎などといった原因による鼻詰まりです。
鼻の通りが悪いと口呼吸になってしまいます。
4-2 普段の習慣や癖
鼻に問題がなくても、単に習慣や癖で口呼吸をしている場合があります。
普段から口呼吸が続いていると、睡眠中でも無意識に口呼吸になる恐れがあります。
例えば、スマートフォンの操作や携帯ゲーム機に集中して、下を向く姿勢が長くなると呼吸が浅くなり、つい口が開いて口呼吸になりやすくなります。
また、近年では長時間マスクをすることも増え、息苦しさから無意識に口呼吸をしてしまうことも増えているかもしれません。
4-3 口周りの筋力の低下
顎や舌といった口周りの筋力低下も口呼吸の原因となります。
口周りの筋肉が未発達な赤ちゃんが常に口を開いており、しゃべる度によだれをこぼしてしまうのをイメージするとわかりやすいでしょう。
特に、食べものをよく噛まずにすぐ飲み込んでしまう早食いの方や、硬いものをあまり食べない方は筋力が低下しやすくなります。
4-4 枕が合っていない
鼻も口周りの筋力も問題がなく、日中は鼻呼吸できているのに、朝起きた時によだれが出ているといった睡眠中の口呼吸の疑いがある場合は、枕の高さが自分に合っていないことが考えられます。
枕が高すぎると気道が確保しづらく、口呼吸になりやすくなるので注意です。
口呼吸は鼻詰まりによって正常な鼻呼吸ができないことが主な原因。
姿勢の悪い習慣や、舌や顎の筋力低下によって無意識に口呼吸になってしまうことがある。
鼻や口周りの筋力に問題がなくても、枕が高すぎると気道が確保されず口呼吸になる可能性がある。
5. 口呼吸の対策
5-1 鼻呼吸ができない場合は治療を
アレルギー性鼻炎や蓄膿症など、何らかの病気が原因で慢性的に鼻がつまっている場合は、根本となる病気を治療しないと口呼吸の改善は難しいです。
そもそも鼻が詰まっていて鼻呼吸ができないという方は、早めに専門医を受診するようにしましょう。
5-2 普段から鼻呼吸を意識する
口呼吸が習慣や癖にならないように、しっかり鼻呼吸できているか、口が開きっぱなしになっていないかを1日のうちに何度も意識して気をつけるようにしましょう。
マスクをしている場合、苦しいときに無理をして口を閉じる必要はありませんが、マスクを外す場面等、気づいたときに意識するように心がけましょう。
鼻呼吸のほか、姿勢の悪い状態や猫背だと口呼吸になりやすくなるため、背筋を伸ばすことも意識しましょう。
机やパソコン等、自分の目につきやすい場所に「鼻呼吸!背筋!」と書いたメモを貼っておくのがおすすめです。
5-3 口周りの筋力を上げる
食事の時によく咀嚼する
食事時の咀嚼回数を増やして、顎の筋力アップを目指しましょう。
早食いせず、一口につき30回程度しっかり噛むことを心がけるようにします。
筋力アップのほか、30回咀嚼することで胃腸への消化・吸収の負担を軽くすることができるというメリットもあるのでおすすめです。
するめなどの硬いものを意識的に食べるようにするとさらに良いでしょう。
あいうべ体操(引用:福岡のみらいクリニック)
あいうべ体操は、福岡県のみらいクリニック院長今井一彰氏が考案した簡単な口の体操です。※1
この体操を継続することで舌の筋肉が鍛えられ、自然な鼻呼吸ができるようになることが期待できます。
やり方は、以下の4つの動作を順に繰り返すだけです。声は出しても出さなくてもかまいません。
1. 「あー」と口を大きく開く
2. 「いー」と口を大きく横に広げる
3. 「うー」と口を強く前に突き出す
4. 「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
以上1〜4を1セットとして、1日30セットを目標に毎日続けましょう。
いきなり1度に30セット行うと疲れてしまうので、慣れるまでは「食後に10セット、合計で30セットを目指す」といったように2〜3度に分けた方が続けやすいです。
口を開けると顎が痛む場合は、回数を減らすか、「いー」「うー」の動作のみを繰り返すだけでも良いです。
慣れてきたら毎日の回数を少しずつ増やします。ただし、やり過ぎても良くないので1日100セットまでにしましょう。
ただ一度にたくさんするよりも、毎日少しづつでも継続することが大切です。
なお、あいうべ体操を行う場合は、湿度が高い風呂場で行うと、口が乾燥することなくできるのでおすすめです。
5-4 枕を整える
口呼吸にならないよう、枕の高さにも気をつけましょう。
使用する枕は、高すぎず低すぎず、自分の体型に合った高さの安定感のあるものを使用するのが良いです。
睡眠に良い枕の高さについて、具体的には、仰向けになった場合に敷き寝具と首の角度が約5度になるのが理想的といわれています※2。
5-5 寝るときに口にテープを貼る(口閉じテープ)
日常的に鼻呼吸を意識していても、睡眠中では意識的なコントロールはできません。
そこで、寝るときに「口閉じテープ」を試してみましょう。
口閉じテープとは
口閉じテープとは、文字通り口にテープを貼って固定することです。
寝ている時に自然に口が開かないように強制的に口をテープで固定することで、寝ている間もしっかり口呼吸を防ぐことができます。
口閉じテープの効果
口閉じテープで口呼吸を予防することにより起こる効果を示した研究報告があります。
国内企業の小林製薬株式会社が2021年9月に行われた「日本睡眠学会第46回定期学術集会」にて行った報告によると、※3
30〜40代の健康な男性7人を対象に、口閉じテープを使用した場合と使用しない場合で口内の乾燥状態と深い睡眠の割合を比較した研究において、口閉じテープを使用した場合の方が口内のよだれの減少が抑制されることや、深い睡眠の割合が多い傾向が確認されています。
使用するテープ
使用するテープは、いわゆる「口閉じテープ」や「鼻呼吸テープ」専用として市販で売られているものが基本的に使いやすくて良いですが、身近にあるものでも代用することができます。
代用品としてのおすすめは医療用の紙テープ(サージカルテープ)とマスキングテープです。
かぶれにくい絆創膏等でも良いでしょう。
テープは剥がすときにどうしても肌に負担がかかりやすいので、粘着力の強いセロハンテープやガムテープは向いていません。
代用品として使用するテープの素材は柔らかくて、粘着力が強過ぎないものを選ぶのが良いでしょう。
テープの粘着力が少し強いと感じるならば、何度か手に貼って剥がすなどして調節しましょう。
テープの貼り方
市販のものを使用する場合は、取扱説明書等に表記されている貼り方に従うようにしましょう。
代用品を使用する場合、基本的な貼り方は以下になります。
1. 口をゆるく閉じる
2. テープを5cm 程度の長さに切る
3. 切ったテープを唇の中央部に縦に貼る
ポイントとしては、テープを貼るときに口を固く閉じるのではなく、口から少し空気が漏れる程度にゆるく閉じることです。固く閉じたまま固定すると咳やくしゃみ等ですぐに剥がれやすくなります。
テープは強く口に貼り付ける必要はなく、軽く当てる程度で十分です。
もし寝ている間に剥がれてしまうのが心配な場合は、唇をはさんでテープを2枚、「V」や「X」の字に貼って固定するのも良いでしょう。
この場合でも空気が通る隙間を少し作っておきましょう。
口閉じテープの注意点
口閉じテープは人によっては危険な場合があるので注意です。
慢性的な鼻炎等で鼻が完全に詰まっている方は、口を閉じてしまうと呼吸ができなくなる可能性があり危険なので、口閉じテープは控えましょう。
またテープを付けるのに不安や抵抗感があり、ストレスを感じるという方は睡眠の質を悪くする可能性があるのでおすすめできません。
心理的な不安や違和感がある方は、就寝する30分ほど前からテープを貼っておくと慣れる場合がありますが、それでも難しいときは無理せず使用を中止してください。
また、テープによってかぶれた場合も使用を控えた方が良いでしょう。
何らかの病気で鼻呼吸を正常に行えない場合は、その根本となる病気を治療することが最優先。
無意識に口呼吸にならないよう、普段から鼻呼吸を心がけることが大切。背筋を伸ばすことも意識する。
口周りの筋肉を鍛えるには、食事時の咀嚼を一口につき30回にする、「あいうべ体操」を行うといった方法がおすすめ。
枕の高さは、高すぎず低すぎず、自分に合ったものを使用する。
就寝時は意識的な鼻呼吸が行えないため、強制的に口を固定する「口閉じテープ」を試してみると良い。
6. まとめ
睡眠中のよだれの原因と対策についてご紹介しました。
睡眠中のよだれには重要な役割がありますが、口呼吸することによって外に出てしまうとその恩恵を受けることができません。
また、よだれが垂れ出る原因の口呼吸は睡眠時無呼吸症候群や感染症のリスクを高める恐れがあるので大変危険です。
普段から鼻呼吸を意識し、あいうべ体操で口周りの筋力を上げるといった早めの対策を行うようにしましょう。
睡眠時は意識的なコントロールができないので、「口閉じテープ」で強制的に口を閉じる方法がおすすめです。
無理のない範囲で試してみましょう。
※1 福岡のみらいクリニック "あいうべ体操" https://mirai-iryou.com/aiube/ 2022年2月2日アクセス
※2 厚生労働省 "快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係" https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html 2022年2月2日アクセス
※3 小林製薬株式会社 "口閉じテープにより口内の乾燥を予防し、睡眠の質改善の一助となる可能性を確認" https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2021/211202_01/ 2022年2月2日アクセス