眠りが浅いと夢を見る?夢の特徴や悪夢を見ないで寝る方法を詳しく解説!
人が夢を見ることは、睡眠の中でも不思議なことの一つです。
昔から、夢は神や超自然的存在からの「お告げ」などの宗教的な視点から語られ、現代でも「夢占い」という言葉があります。
夢についてはっきりと分かっていないことは多いですが、どのタイミングで夢を見ているか、夢を見ている時の身体の状態については研究で明らかになっていることもあります。
この記事では、夢とはどういうものなのか、どのタイミングで夢を見るのかについてご紹介します。
加えて、悪夢を避けるための方法も併せてご紹介します。
1. 夢について
1-1 夢とは
夢は、睡眠中に発生するイメージや感情、思考が脳内に現れたものとされています。※1
最も一般的なのは視覚的イメージですが、夢は視覚だけでなく、味覚や聴覚等のすべての感覚が関係しているとも考えられています。
鮮やかな色のイメージで夢を見る人もいれば、白黒のイメージで夢を見る人もいますが、一方生まれつき目の見えない人は、味、匂い、音に関連するものが夢に多い傾向があるといいます。
1-2 夢を見る理由
夢については、実はまだよく分かっていないことが多いです。
そもそも「なぜ私たちは夢を見るのか」ということについても諸説あり、現在でも睡眠の専門家の間で議論が続いています。
夢の目的に関する代表的な仮説は以下になります。
1. 記憶の統合:日中に得た情報で重要なものを整理し、長期的な記憶として定着させるため
2. 記憶の消去:嫌な記憶、不必要な記憶を消去し、精神的な健康状態を保つため
3. 感情の処理:強い感情をともなう記憶を再生することで、感情を処理するため
4. 記憶の分析:最近の出来事を客観的に評価・分析するために映像として再生される
5. 睡眠の副産物:夢は睡眠における副産物であり、それ自体に目的や意味を持たない
夢は、睡眠中のイメージや記憶、思考が脳内に現れたもので、視覚以外にも味覚や聴覚といった五感全てが関係していると考えられている。
夢を見る理由について詳しいことは分かっていないが、記憶の統合や消去、感情の処理といった仮説がある。
2. 夢を見るタイミング
2-1 「夢はレム睡眠時に見る」という誤解
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があるということはご存知の方も多いと思います。
ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に4回ずつ現れ、睡眠後半に向かうほどレム睡眠の間隔が長くなるのが一般的な睡眠サイクルですが、夢については「レム睡眠時に見るもの」とよくいわれてきました。
しかし、実際にはレム睡眠とノンレム睡眠の両方で夢を見ていることが分かっています。
「夢見睡眠」と呼ばれるレム睡眠
レム睡眠は、1953年にシカゴ大学のKleitman教授とその大学院生Aserinskyによって発見されました。※2
その実験において、レム睡眠には3つの特徴があることが報告されました。
1つ目の特徴は、その睡眠状態では眼球が急速に動くこと。2つ目の特徴は、全身の筋肉が弛緩して体動がほとんどなくなること。
そして3つ目の特徴が、レム睡眠状態の時に外からの刺激で起こした場合、被験者が「夢を見ていた」と回答する確率がおよそ80%と極めて高かったことです。
この3つ目の特徴によってレム睡眠は「夢見睡眠」として広く知られるようになったのです。
ノンレム睡眠でも夢を見ている
夢見睡眠として有名になったレム睡眠ですが、その後の1957年の実験で、スタンフォード睡眠研究所の設立者でもあるDement教授らにより、実はノンレム睡眠中でも私たちは夢を見ていることが分かっています。※3
その実験で、深いノンレム睡眠状態の時に起こしたところ、頻度は少ないながらも被験者が「夢を見ていた」と答えたのです。
また、近年の研究においても、60%程度の被験者がノンレム睡眠中の夢見を報告したという結果が報告されています。※4
つまり、眠っている限り、人は常に夢を見ている可能性があるということが示され、必ずしも夢を見ている睡眠が浅いわけではないということが分かりました。
レム睡眠時の夢を覚えやすい理由
「起きた時に覚えている夢」というのは、ほとんどの場合目が覚める直前に見ていた夢になります。
通常、人が目覚めるのは浅いノンレム睡眠かレム睡眠のときです。そして、睡眠後半はレム睡眠の間隔が長くなるので、最後のレム睡眠時に見ていた夢を鮮明に覚えていることから「レム睡眠で夢を見る」とされていました。
また、レム睡眠時の夢は鮮明な場合が多いのに対し、ノンレム睡眠時の夢はぼんやりしているので、レム睡眠時の夢の方が印象に残りやすいということも理由の一つと考えられます。
2-2 夢を見る人と見ない人の違い
人はレム睡眠でノンレム睡眠の両方で夢を見ています。
通常、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルは一晩に4〜5回起こるとされていますが、正常な睡眠リズムであれば、夢はレム・ノンレムを合わせて最大8〜10回ほどの夢を見ていることになります。
とはいえ、もちろん「今日は夢を見なかった」「普段から夢を見ない」といった方も多いでしょう。
その違いは、単に「見た夢を覚えているかどうか」ということになります。
そもそも、見た夢を記憶として残しておくのは難しいのです。
夢を見ている時は起きている時と比べて、記憶を固定する神経伝達物質があまり分泌されないといいます。※5また、レム睡眠時に見た夢も、その後にノンレム睡眠がやってくると忘れてしまうといいます。
夢は、レム睡眠とノンレム睡眠の両方で見ている。
人は一晩に数回夢を見ているが、覚えている夢は起きる直前に見た最後の夢であることがほとんど。
夢を見ている人と見ていない人の違いは、単に見た夢を覚えているかいないかどうかの違い。
3. 夢の内容
レム睡眠時とノンレム睡眠時によって夢の内容は変わるといいます。
それぞれの主な特徴をご紹介します。
3-1 レム睡眠の夢
レム睡眠時の夢は「実体験に近い夢」「ストーリーのある夢」が多いです。※6
夢の中での体感時間も長く、目が覚めた時にその内容を詳しく思い出せる、いわゆる私たちがイメージする夢らしい夢です。
怖い夢や刺激的な夢といった感情を動かす夢の場合もあり、鮮明で印象的というのが特徴といえます。
「身体は寝ていて、脳は起きている」というレム睡眠中は、覚醒時のように大脳皮質が活性化しており、夢の中での自分の動きに合わせるように大脳の運動野という領域で手足の運動に関わる神経細胞が活性化します。
つまり、脳の中では、視覚や身体の動きを感知して、まるで現実であるかのように夢の世界を体感しているので、具体的で現実的な夢を見ることが多いとされています。
3-2 ノンレム睡眠の夢
一方、ノンレム睡眠時の夢は「抽象的で辻褄が合わない夢」が多いです。
夢の中での体感時間は短めで、誰かと話していたり、どこかの景色が見えたりといった、何となくストーリーのようなものがあるものの全体としてははっきりしない夢です。
曖昧でぼんやりとしたイメージや音などの感覚的な体験が中心で、断片的というのが特徴といえます。
「脳を休める睡眠」というノンレム睡眠中でも、一定の大脳皮質活動は維持されるので夢を見ますが、活動自体は低下しており、運動野は活性化することなく、大脳の各領域間の連携も良くないので、曖昧な夢が多くなるとされています。
レム睡眠時の夢は「実体験に近い夢」「ストーリーのある夢」が多く、鮮明で印象的というのが特徴。
ノンレム睡眠時の夢は「抽象的で辻褄が合わない夢」が多く、曖昧で断片的というのが特徴。
4. 悪夢について
「誰かに追いかけられる」、「事故に巻き込まれる」といった怖い夢を見て夜中に目が覚める、といった経験は誰しもあるのではないでしょうか。
一般的に悪夢は「怖い夢」「嫌な夢」のことですが、睡眠医学においては、とりわけ目覚めを引き起こすような夢が悪夢と呼ばれます。
悪夢は日常にも影響を与える可能性があるので、頻繁に起こる場合は注意です。
4-1 人は悪夢を見やすい
実は、夢の内容は基本的に悪夢が多いといいます。
私たちが夢を見ているとき、感情や記憶に関わる脳の「扁桃体」という部位が活性化しています。
この扁桃体は、喜びなどのポジティブな刺激でも活性化しますが、特に不安や恐怖といったネガティブな刺激による活性化が圧倒的に多いといいます。その強い感情の刺激によって悪夢が生まれやすくなるのです。
そして、扁桃体は主にレム睡眠時において活性化していることが分かっており、悪夢はレム睡眠時が多いと考えられています。
特に悪夢を引き起こしてしまう原因については、トラウマになるような衝撃的な体験のほか、日中に感じるストレスやプレッシャーによるものと考えられています。
4-2 頻繁に悪夢を見る場合は注意
基本的に悪夢は誰でも見るものですが、一時的に気が滅入ることはあっても、その後の活動や睡眠の質に目立った影響を与えることはほとんどありません。
しかし、悪夢が頻繁に発生する場合は要注意です。
夜中に何度も起きてしまうことや、悪夢を見たくないために睡眠を避けるようになり、不眠症や睡眠不足のリスクを高める可能性があります。
その状態は日中の眠気や気分の悪化、思考力の低下といった事態も引き起こしてしまいます。
悪夢が週に1回以上あり、それによって睡眠や日中の生活が妨げられている場合は、できるだけすぐに専門医に相談すると良いでしょう。
4-3 悪夢は改善できる
悪夢がひどい場合は専門医に相談するのが一番ですが、
頻繁に悪夢を見て目が覚めるという方は、生活習慣や睡眠環境を整えることで改善されることがあります。
夜中に目が覚めてしまうことを中途覚醒といいますが、悪夢を見たから中途覚醒が起きたというより、中途覚醒が起きた時に直前に見た夢が悪夢だったというパターンに特に当てはまります。
つまり、睡眠の質が悪いために中途覚醒が何度も起き、起きる直前に見ていた印象的な夢を覚えてしまっているので、睡眠の質を上げてぐっすり眠ることで悪夢のリスクを減らすというわけです。
悪夢に限らず、一晩の睡眠で夢を何度も見る(覚えている)方は、気づかない内に中途覚醒をしているのかもしれないので、睡眠の質を意識することが大切になります。
具体的な方法は次にご紹介します。
夢は基本的に悪夢が多く、悪夢はレム睡眠時に起きやすい。
悪夢が頻繁に起こる場合は日常生活にも悪影響を与えかねないため、専門医に相談すると良い。
悪夢は睡眠の質を上げることで改善できる場合がある。
5. 悪夢を見ないようにするには
悪夢を見ないようにするには、悪夢の原因となるイメージや感情を引き起こすものを排除すること、不規則な睡眠リズムによるレム睡眠の増加や中途覚醒を防ぐことが大切なポイントです。
以下の4つの項目に気をつけてみましょう。
5-1 安定した睡眠リズムを作る
普段の就寝時刻がまばらだったり、休みの日に寝溜めあるいは夜更かしをしたりといった不規則な生活を避け、できるだけ睡眠時間を確保し、毎日同じ時間に就寝・起床するようにしましょう。
睡眠リズムが崩れると、睡眠サイクルが不安定になることでレム睡眠の割合が偏る可能性があり、それだけ中途覚醒や悪夢を見る確率も高くなります。
また、睡眠不足の状態では気分も沈みがちになり、ネガティブなものに敏感になるので、悪夢の原因となる恐れがあります。
5-2 就寝前はリラックス
就寝前の思考は睡眠中の思考にも影響を与えかねないため、ネガティブな考えを寝床に持ち込まないようにしましょう。反対に、ポジティブなことを考えて眠れば、良い夢を見られる確率は上がるかもしれません。
また、不安やストレスは発散することが大切です。積極的に趣味に取り組んだり、軽めの運動をすると良いでしょう。
就寝前であれば、軽いストレッチやぬるめの入浴、アロマテラピー等、心と身体を落ち着かせてリラックスしましょう。
また、恐怖の感情を引き起こすような映画や本といった悪夢の原因になりやすいものや刺激的なものはできるだけ避けるようにしましょう。
5-3 アルコールを制限する
お酒の飲み過ぎや寝酒は控えるようにしましょう。アルコールは深いノンレム睡眠を減らして睡眠の質を下げるほか、レム睡眠を増やしてしまうので悪夢のリスクが高くなります。
5-4 寝室環境を整える
快適な寝室環境を維持するようにしましょう。指標としては、①明るさ、②静けさ、③衛生、④温度の4つが挙げられます。
部屋はできるだけ暗く、静かで、大量の埃や悪臭がなく、暑すぎず寒すぎない温度であるのが理想的です。
なお個人差はあるので、暗すぎたり静かすぎたりすると眠れない、ストレスを感じるといった方は、自分の好みに合わせるようにしましょう。
悪夢を見ないようにするには、悪夢を引き起こす原因を排除し、ぐっすり眠れるように生活習慣と睡眠環境を改善することが大切。
毎日規則的な睡眠をとることで、レム睡眠が偏るといった睡眠リズムの乱れを防ぐ。
不安やストレスは悪夢の原因となるため、就寝前はネガティブな思考をやめ、ストレスを発散してリラックスする。
アルコールはレム睡眠を増やしてしまうため、飲み過ぎや寝酒は控える。
寝室は、できるだけ暗く、静かで、大量の埃や悪臭がなく、快適な温度であるのが理想的。
6. まとめ
夢についてや、悪夢を見ないための方法についてご紹介しました。
夢を見る意味や、夢が発生する詳しいメカニズムなどについてはまだまだ分かっていない部分が多いですが、レム睡眠とノンレム睡眠の両方で夢を見ていることが判明するなど、明らかになってきていることもあります。
また、悪夢については心理的なストレスやプレッシャーによるものと考えられており、生活習慣や睡眠環境を整えることで改善できる可能性があります。
安定した睡眠リズムや就寝前のリラックスを意識するようにしましょう。
※1 National Sleep Foundation "Dreams" https://www.sleepfoundation.org/dreams 2022年3月3日アクセス
※2 ASERINSKY, E., & KLEITMAN, N. Regularly occurring periods of eye motility, and concomitant phenomena, during sleep. Science, 118, 273-274, 1953.
※3 Dement W & Kleitman N. The relation of eye movements during sleep to dream activity: An objective method for the study of dreaming. Journal of Experimental Psychology, 53, 339-346, 1957.
※4 Nielsen, T.A. A review of mentation in REM and NREM sleep: "covert" REM sleep as a possible reconciliation of two opposing models. The Behavioral and brain sciences, 23(6), 851-66; discussion 904-1121, 2000.
※5 東洋大学 "夢は自分の記憶から作られる?悪夢の意味や良い夢を見る方法を臨床心理士に聞いてみた" https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/life/dream-meaning/ 2022年3月3日アクセス
※6 東洋経済オンライン "「はっきり内容を覚えている夢」の持つ役割" https://toyokeizai.net/articles/-/172167 2022年3月3日アクセス