【仮眠で寝不足解消、パフォーマンスアップ】生産性を最大化する仮眠法をご紹介!
仕事や勉強中に急に眠くなってしまい困ったことがある、という方は多いのではないでしょうか。
日中の眠気や睡眠不足の解消には、我慢せずに仮眠(昼寝)をとることが効果的です。
ただ仮眠というと「睡眠不足の人がするべきもの」、「怠けている人がするもの」というマイナスなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
質の良い仮眠は睡眠不足の解消だけではなく、パフォーマンスを上げたり、ストレスを軽減したりといった効果があり、誰にとっても生産性を向上させる有益なものという認識が世界で広まっています。
現に GoogleやApple、Microsoft、NIKE といった世界的な企業も、オフィスに仮眠スペースを設けるなど仮眠を積極的に取り入れています。
この記事では、そんな仮眠のもつ効果や良質な仮眠のコツについてご紹介します。
1. 仮眠の効果
1-1 睡眠不足の解消
睡眠不足の状態は、脳の活動が低下し、疲労感や作業効率の低下といった悪影響を及ぼします。
必要な睡眠時間を確保できなかった場合は、仮眠をとることで補うことができます。
1-2 作業効率が上がる
短時間の仮眠、具体的には日中にとる15分〜20分程度の睡眠は「パワーナップ(積極的仮眠)」と呼ばれており、仕事の作業効率を上げる方法としてGoogleやAppleといった世界的な企業も取り入れています。
この短時間の仮眠が持つ力について、NASAが行った研究により※1、仮眠によって脳のパフォーマンスが上がるということが科学的に明らかになっています。
NASAは1994年に、集中力を維持させるための睡眠研究「NASA Naps」を行い、具体的には宇宙飛行士や航空機のパイロットを日中に26分間の仮眠をとった人・とっていない人に分け、その後の認知能力や注意力を計測しました。
その結果、仮眠をとったパイロットは認知力が34%、注意力が54%も向上していることが分かりました。
仮眠によって仕事や勉強の効率の向上が期待できます。
特に車の運転や工事、工場の作業など、集中力の欠如が大きな事故に直結してしまうような仕事の方は仮眠をとった方が良いでしょう。
1-3 ストレスを軽減させる
睡眠不足の日が続いていたり、仕事がとても忙しく頭を使いすぎていたりすると、脳がオーバーヒートした状態になります。
その状態では疲労やストレスがどんどん溜まっていき、仕事でケアレスミスをすることが増えたり、ちょっとしたことにイライラしたりといったことも起きてしまいます。
仮眠は、そんなオーバーヒート状態の脳をクールダウンさせることで、ストレスを軽減する効果があります。
不足した睡眠時間を補うために仮眠は有効。
短時間の仮眠には作業効率が向上する効果がある。
仮眠には頭をクールダウンさせることによるストレス軽減効果がある。
2. 良質な仮眠をとるコツ
2-1 仮眠は午後3時までに行う
仮眠のタイミングは、午後3時までが良いとされています。
特に、もっとも眠気がやってきやすい時間帯といわれている午後2〜4時の時間帯に仮眠をとることで、脳の疲れや眠気がとれ、作業効率も上がります。
ただし、午後3時以降に仮眠をとると体内時計のリズムが崩れ、夜の睡眠に影響がでてしまう可能性があるので、仮眠は午後3時までに済ませるようにしましょう。
午後に眠くなりやすい理由
午後2〜4時の時間帯がもっとも眠気がやってきやすいとお伝えしましたが、その理由は大きく2つあります。
1つは、食後に血糖値が急激に上昇するからです。
血糖値が上昇すると、「オレキシン」という身体の覚醒に関わるホルモンが分泌されなくなることにより、眠気が襲ってきます。
また、暴飲暴食によって血糖値が急激に上がって急激に下がる「血糖値スパイク」が引き起こされると、軽い低血糖状態になり、眠気や頭痛が起こりやすくなる場合があります。
もう1つは、人間の生体リズムによるものです。
人の身体には体内時計という機能が備わっており、私たちが毎日ほぼ同じ時間帯に眠くなり、一定の時間で自然に目が覚めるのも、この体内時計が機能しているからです。
体内時計は「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる約24時間周期のサイクルで動いていますが、他にも「半概日リズム(サーカセミディアンリズム)」という約12時間周期のサイクルの機能も備わっています。
この約12時間周期のリズムにおける眠気のピークが午前2~4時と午後2〜4時の2回訪れるので、午後の時間帯で昼食の有無に関わらず眠くなってしまうのです。
2-2 仮眠の長さは15〜20分
仮眠をとる時間は15分〜20分、長くても30分未満が良いとされています。
この時間には、ノンレム睡眠が関係しています。
ノンレム睡眠とは、脳が眠っている状態の深い眠りのことをいいます。さらにこの深い眠りの中でも、眠りの深さによってステージ1~4(浅い→深い)の4つの段階に分けられるとされています。
はじめの5分ほどは浅い眠りのステージ1、15分~20分程度で訪れるのが軽い睡眠レベルのステージ2です。
カリフォルニア大学の神経科学者マシュー・ウォーカー氏の研究によると※2、
このステージ2の段階では、脳内のキャッシュ・メモリがリセットされて、情報を整理・記憶したり、優先順位をつけたりする脳のワーキングメモリが強化されることがわかっています。
この段階で目覚めれば、ある程度深い眠りで脳を休ませつつ、すっきりと起きることができます。
しかし、ここで30分以上眠り続けるとステージ4の深い眠りに入ってしまいます。
この深い眠りから無理やり目を覚まそうとすると、起きるのが辛くなったり、起きた後も眠気や頭がぼーっとする状態が続く「睡眠感性(睡眠惰性)」が起こったりします。
また、眠りすぎると夜の睡眠に影響がでる恐れもあります。
2-3 仮眠の前にカフェインを摂取する
仮眠をとる際は、事前にカフェインを摂取しておくのがおすすめです。
カフェインには覚醒作用があることは広く知られていますが、その覚醒効果が現れるのはおよそ15分〜20分後といわれており、仮眠の時間にちょうど良いタイミングです。
仮眠の前にコーヒーや緑茶等を摂取することで、カフェインの作用が働くタイミングですっきり起きられ、その後の作業もスムーズになります。
ただし、夜の睡眠に影響がでる恐れがあるので、とり過ぎには注意しましょう。
2-4 身体を横にしない
仮眠時の姿勢は、机に伏せたり、椅子にもたれたりするなど、身体を横にしない快適すぎない状態で寝るのが良いです。
身体を横にすると楽になり身体の疲れがとれるというメリットがありますが、心地よいだけに深い眠りに入ってしまいやすくなります。
そこで、あえて快適すぎない状態で仮眠することで眠りすぎを防ぎます。
ただ、あまり不自然な姿勢で眠ると身体を痛めてしまう場合があるので、クッション等を用意しておくと良いでしょう。
2-5 身体を締め付けない服装
仮眠時はできるだけリラックスした方が良いので、身体を締め付けるものを外しましょう。
腕時計は外しておき、ベルトやネクタイはゆるめておくと良いです。
2-6 仮眠アイテムを活用しよう
アイマスク
仮眠時に目に光が入ると、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の分泌が抑えられ、寝つけなくなるなど睡眠の質を低下させる恐れがあります。
光の刺激が入らないようにするにはアイマスクがおすすめです。
耳栓・イヤホン
仮眠するときの環境は、うるさすぎても静かすぎても寝つけなくなることがあります。
気にならない程度の雑音でなければ、耳栓で音を遮断するなどして調節すると良いでしょう。
静かすぎて寝つけない場合は、イヤホンでホワイトノイズを聞くのがおすすめです。
ホワイトノイズとは風や雨、波の音といった自然の音に代表される心地よい雑音のことをいい、眠りを促すといわれています。
ホワイトノイズを聞くことができるアプリ等を活用すると良いでしょう。
2-7 仮眠からすっきり目覚める方法
基本的に短い仮眠をしたあとはスッキリした気分になっているはずですが、睡眠不足の程度や個人によっては差がある場合もあります。
目覚めても少しぼんやりしている状態であれば、以下のことを試してみましょう。
ガムを噛む
ガムをかみ続けると、あごの筋肉の収縮と弛緩が繰り返され、一定のリズム運動となります。
このようなリズム運動をすると、「セロトニン」と呼ばれる身体の覚醒に関わるホルモンの分泌量が増加し、脳や身体が目覚めやすくなります。
明るい場所で光を浴びる
仮眠時には光を遮断するのが良いですが、起きた後は明るい光をたっぷり浴び、眠気を抑えましょう。
直射日光を浴びたり、外を眺めたりするだけでも良いです。
散歩するなど身体も動かすとさらに目覚めやすくなります。
ストレッチをする
身体を伸ばしてストレッチをするのもおすすめです。
特に背筋を伸ばすことで体温が上がりやすくなり、脳と身体が目覚めやすくなります。
また、ストレッチによって身体の筋肉の収縮と拡張が繰り返されることで血行が促進され、脳に十分な酸素が届けられるので、その後のパフォーマンスも向上します。
冷たい水で顔を洗う
冷たい水で顔を洗うと身体に刺激が加わり、身体を覚醒させる交感神経が活発になります。
交感神経が活発になると、心拍数や血圧も自然に上がって体温が上昇するので、脳や身体が活動状態になりやすくなります。
仮眠は、午後3時までに15〜20分程度とると良い。
仮眠の前にカフェインを摂取しておくと、仮眠後のタイミングで丁度良くカフェインの覚醒効果を得ることができ、すっきり起きることができる。
仮眠時の姿勢は机に伏せる、椅子にもたれるなど快適すぎない状態だと眠りすぎを防ぐことができる。
仮眠時は身体を締め付けるアイテムは外し、アイマスクや耳栓を活用して外からの刺激を調節すると良い。
仮眠後は、光を浴びる、ストレッチをするといった方法で目を覚ますとその後の作業がスムーズになる。
3. 時間がとれない場合の仮眠法
3-1 1分間仮眠法
どうしても仮眠する時間がないほど忙しい時は、「1分間仮眠」を試してみると良いでしょう。
1分間仮眠とは、椅子に深く腰掛けて、全身の力を抜いて1分間目を閉じるだけの簡単な仮眠方法です。
脳への刺激は視覚がおよそ80%を占めるといいます。
1分間という短時間でも、目を閉じて視覚情報を遮断することで、脳をある程度休ませることができます。
3-2 1分間仮眠法のコツ
姿勢
椅子に深く腰掛け、上体を起こしたままの姿勢で行いましょう。
そのまま目を閉じて、1分間リラックスすれば完了です。
休息前と後に意識を整える
1分間仮眠を行う前は、「今から脳の疲れをとるぞ!」という意識をもって、何も考えず身体と脳を休ませることに集中すると良いとされています。
同じく、仮眠後は「疲れがとれた!」と前向きな意識をもち、サッと頭を切り替えることが大切です。
眠くなる前にこまめにとる
1分間仮眠は、自分が「疲れたな」「仕事の効率が下がってきたな」「なんだかイライラするな」と感じたタイミングで行うのが良いです。
また、こまめに行うことで眠気をあらかじめ先取りしておき、ためないようにすることがポイントです。
眠気や疲れをためてしまうと急激な眠気がやってきてしまい、1分間どころか長時間眠ってしまうことになるので気をつけましょう。
忙しくて時間がない場合は、1分間目を閉じてリラックスするだけの「1分間仮眠法」がおすすめ。
1分間仮眠を行う時は、椅子に深く腰掛けてリラックスした姿勢で、休むことに意識を集中することが大切。
1分間仮眠は自分が疲れを感じた段階でこまめに行い、眠気や疲れをため込まないように気をつける。
4. 夜の睡眠もしっかりとる
ここまで仮眠の効果やコツについてお伝えしましたが、日中の仮眠だけではなく、夜の睡眠をしっかりとることが何より大切です。
仮眠は睡眠不足をある程度補ってくれ、疲労回復や作業効率向上にも有効ですが、完全ではありません。
睡眠不足の解消はあくまで一時的な対策に過ぎず、普段の夜の睡眠で睡眠不足の状態にならないことが第一です。
また作業効率の向上という点においても、最高のパフォーマンスを発揮するには昼と夜の両方で良質な睡眠をとることが必要になります。
「日中に仮眠さえすれば大丈夫」と考え、夜更かしや徹夜をしていては本末転倒です。
やむを得ない場合を除き、仮眠を当てにしすぎないような生活を心がけ、夜の睡眠をおろそかにしないようにしましょう。
仮眠の効果を当てにして夜更かしや徹夜をするといったことはせず、夜の睡眠もしっかりとることが大切。
5. まとめ
仮眠の効果と良質な仮眠のコツについてご紹介しました。
仮眠をとる時は15〜20分の時間にとどめ、仮眠の前にカフェインをとったり、アイマスクや耳栓を活用したりなどの工夫をしましょう。
短時間の仮眠で睡眠不足の解消や作業効率の向上といった効果を得ることができますが、仮眠を当てにして夜の睡眠をおろそかにしないようにしましょう。
※1 Rosekind MR, Graeber RC, Dinges DF, Connell LJ, Rountree MS, Spinweber CL, et al. Crew factors in flight operations IX: effects of planned cockpit rest on crew performance and alertness in long-haul operations, 1994.
※2 An afternoon nap markedly boosts the brain’s learning capacity | Berkeley News https://news.berkeley.edu/2010/02/22/naps_boost_learning_capacity/ 2022年1月19日アクセス