睡眠不足がパフォーマンスに与える影響

認知機能の低下
睡眠時間とパフォーマンスの関係について、ペンシルベニア大学とワシントン州立大学の研究者らが行ったある実験があります。※1
1日の平均睡眠時間が7〜8時間の男女48人を集め、3日間眠らずに起きているグループ、2週間を1日4時間の睡眠時間で過ごすグループ、6時間のグループ、8時間のグループの4つに分けて、認知機能や注意力等を記録し、その変化を調べました。
実験の結果、睡眠時間を8時間とったグループは認知機能や注意力ともに低下しませんでした。
しかし一方、4時間のグループと6時間のグループは、日を追うごとにパフォーマンスが低下していきました。
最終的に4時間睡眠のグループが最もパフォーマンスの低下が見られましたが、6時間のグループも4時間のグループとそれほど大きな差はありませんでした。
睡眠不足のダメージは蓄積する
この実験で明らかになったことは、睡眠不足のダメージは蓄積するということです。
実験開始から1週間経つと、6時間睡眠のグループの一部は睡魔に襲われながら過ごすようになりました。
そして2週間後、6時間のグループでは、2日間寝ないで過ごしたグループと同じレベルまでの低下が見られました。
つまり、1日6時間の睡眠を2週間続けると、2日間徹夜している状態と同じレベルのパフォーマンスになるということです。
睡眠不足の状態は酔っ払いと同じレベル!
徹夜をしている時の脳の状態について、1997年にオーストラリアの研究者らが発表した研究では、17時間以上起きている人の認知機能が血中アルコール濃度が0.05%の状態と同じレベルにまで低下したといいます。※2これは、車を運転していると酒気帯び運転とみなされるレベルです(日本の酒気帯び運転の基準値は血中アルコール濃度0.03%相当)。
6時間睡眠を1週間続けるだけでも、ほとんど酔っ払いながら仕事をしていると同じことになります。
これでは到底生産性が良いとは言えません。
作業効率の低下に自分では気づかない!
ペンシルベニア大学らの実験で、他にも驚くべきことが判明しました。それは、パフォーマンスの低下に自分自身では気づきにくいということです。
この実験で3日間徹夜したグループが強い眠気を感じていたのに対して、6時間睡眠のグループはそれほど強い眠気を感じていませんでした。
しかし、実際のパフォーマンスは毎日悪化し続けていました。つまり睡眠時間の不足とパフォーマンスの低下は比例しますが、眠気の程度は変わらないということです。
現実の職場においても、睡眠不足の状態でも明るい部屋、人との会話、カフェイン、その他の様々な要因により、「パフォーマンスは変わらず発揮できている」と感じることがあるかもしれませんが、実際のパフォーマンスが最適でない可能性もあります。
「そんなに眠くないから大丈夫」という人は、毎日の睡眠不足に慣れてしまい、眠気を感じにくくなっているだけかもしれません。
本当に最適なパフォーマンスを発揮するには十分な睡眠時間を確保することが重要です。