【睡眠と食事】睡眠の質を上げる食べ物と食事のコツ
食事によって睡眠の質は向上させることができます。
睡眠の質を上げたいと考えているなら、朝や夜の過ごし方だけではなく、食生活を見直してみるのもおすすめです。
この記事では、睡眠に良い栄養素と食べ物、食事をとる際のコツについてご紹介します。
1. 睡眠に良い栄養素3選!
1-1 トリプトファン
トリプトファンは、体内で合成することができない必須アミノ酸の一つで、睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の合成に必要な栄養素です。
人の身体には朝起きて、夜眠るという睡眠のリズムがあり、体内時計がそのリズムを作り出していますが、そのリズムを調整する重要な働きを持っているのがメラトニンです。
夜にメラトニンが分泌されることで私たちは眠くなり、身体は就寝のための準備を始めます。
メラトニンの原料は「セロトニン」というホルモンになりますが、トリプトファンは「ビタミンB6」らとともにセロトニンの原料になります。
トリプトファンは体内で合成することができないので、必ず食事から摂取しなくてはならず、毎日効率よく身体に取り込むことが重要になります。
同じセロトニンの原料となるビタミンB6とともに摂取するようにすると良いでしょう。
トリプトファンを含む主な食品
- 大豆製品(豆腐・納豆・味噌・豆乳など)
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
- 魚介類(サケ・サンマ・イワシ・マグロ・カツオなど)
- 果物類(バナナ、アボカド、キウイフルーツなど)
- その他(アーモンド・クルミなどのナッツ類、はちみつ、白米、鶏卵など)
ビタミンB6を含む主な食品
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
- 肉類(鶏肉、牛レバーなど)
- 魚介類(サケ・サンマ・イワシ・マグロ・カツオなど)
- 野菜類(トウガラシ、ニンニクなど)
トリプトファンの摂取のコツ
トリプトファンによってセロトニンが合成され、そしてセロトニンからメラトニンが生成されるには、十数時間ほどかかるといわれています。
そこで、朝に摂取すると、夜のタイミングでメラトニンが合成されて増えやすくなるので、朝食に摂ると良いでしょう。
朝食は、和食の場合は白米と合わせて味噌汁や納豆といった大豆製品に、卵、焼き魚がおすすめです。
洋食の場合は、シリアルか、チーズをのせて焼いたトーストをメインに、ヨーグルトにバナナやキウイフルーツを添え、飲み物は牛乳か豆乳にすると良いでしょう。
注意点
注意点としては、偏った食事をしないことです。1日にセロトニンからメラトニンが作られる量には限界があり、トリプトファンを摂取すればするほどメラトニンが増えるわけではありませんので、バランスの良い食事を心がけましょう。
1-2 GABA
GABAは体内で合成することができる非必須アミノ酸の一つで、睡眠の質を上げる効果があります。
最近では「睡眠の質を上げる『GABA』を配合!」と謳ったチョコレート等の食品も増え、存在を知っている方も多いのではないでしょうか。
GABAの代表的な効果は、脳の興奮を鎮め、副交感神経を優位にすることによるリラックス効果や、ストレスを軽減させる効果です。
交感神経を刺激し睡眠の質を乱す原因となるイライラや不安を抑え、リラックスすることができるので、寝つきが良くなり、深い睡眠もとりやすくなります。
GABAストレス研究センターが行った実験によると、※1
日中にGABAを摂取したところ、通常より早く寝つくことができ、熟眠感や起きた後の目覚めも良くなったという結果が報告されています。
またGABAは、血管の収縮を和らげることによる、血圧を下げる効果も持っています。
睡眠薬の中でも、GABAの働きを強める成分が配合されているものが多いので、それほど睡眠において大きな影響を与える栄養素といえるでしょう。
GABAを含む主な食品
- 穀物類(発芽玄米、あわ、きび、ひえなど)
- 野菜類(トマト、ナス、ケール、ジャガイモ、パプリカなど)
- 果物類(メロン、バナナなど)
- 発酵食品(納豆、漬物、キムチ、ヨーグルトなど)
- その他(カカオなど)
GABAの摂取のコツ
GABAの摂取量の目安については、リラックス効果やストレス軽減効果を得るには30mg〜100mgが有効とされています。※2
30mg程度ならば、GABAを含むお菓子等で手軽に摂取すると良いでしょう。なお、そうした食品を選ぶ際は、製品に記載されている成分表等の表示を確認するようにしましょう。
100mgほどになると食品から摂取するには多すぎる場合があるので、サプリメントを活用するのがおすすめです。
GABAを摂取するタイミングは、一般的に夕食時や就寝前が良いとされていますが、先にご紹介したGABAストレス研究センターの実験においては、15時に摂取したGABAが睡眠の質の向上に効果を及ぼしたので、自分が摂取できるタイミングで良いと考えられます。
GABAを摂取する食事のメニューは、夕食の場合は、主食は可能であれば玄米を選び、キムチや漬物、納豆といった発酵食品を一緒に摂るようにして、味噌汁を添えるのがおすすめです。
なお、就寝前の食事は睡眠の質を悪くする恐れがあるので、就寝前はバナナのような消化の良いものやGABA入りのお菓子等の軽いもの、サプリメントを摂取するようにして、多く食べることは控えましょう。
軽い食事をとった場合は、就寝まで最低でも1時間は空けるようにしましょう。
体内での合成を促そう
GABAは食品からでも摂取することができますが、基本的に自分の体内で合成させることが大切です。
GABAは、身体に取り込まれたタンパク質が体内において分解され、「Lグルタミン」というアミノ酸になり、その後Lグルタミンが「Lグルタミン酸」に変わり、最後にLグルタミン酸が酵素の働きによってGABAに変わることで生まれます。
GABAを体内で合成させるには、タンパク質を含む食品とビタミンB6を含む食品を食べると良いでしょう。ビタミンB6はLグルタミン酸がGABAに変える酵素の働きを促してくれます。
GABAを生成する土台となるタンパク質、生成をサポートするビタミンB6も摂取することも意識しましょう。
睡眠もしっかりとる
GABAを体内で合成するには睡眠も重要です。
GABAは主に睡眠中に体内で合成されます。睡眠時間が短かったり、浅い眠りが多かったりするとGABAの合成が不十分になり、体内のGABAが不足すると、ストレスの増加や体調不良の原因となる恐れがあります。
寝る前のスマホやゲーム等の睡眠を妨げる行動や夜更かしは控えて、しっかり眠るようにしましょう。
睡眠をしっかりとってGABAの合成が進むと、GABAの効果により睡眠の質が上がり、より良く眠れるようになるという好循環が生まれます。
1-3 グリシン
グリシンも非必須アミノ酸の一つです。
グリシンには、深部体温(脳を含めた身体の内臓の温度)を下げる働きがあります。
私たちが心地よい眠りにつくには、深部体温を下げることが必要であり、深い睡眠をとるために私たちの身体は就寝時に手足の末端から熱を放出したり、汗をかいたりといった体温を下げるための機能が備わっています。
グリシンは血管を拡張させ、身体の末端部分の血行を促すことで体内の熱を効率的に放出させて、深部体温を下げやすくします。
体温は一気に下がるほど眠気も大きくなるので、寝つきが良くなります。
またグリシンには睡眠を深くする効果があり、グリシンを摂取することによってノンレム睡眠のなかで最も深い睡眠である「徐波睡眠」に速やかに到達し、またノンレム睡眠が長くなったという研究結果があります。※3
グリシンを含む主な食品
- 肉類(豚、牛、鶏など)
- 魚介類(エビ、カニ、イカ、ホタテ、カジキマグロなど)
- 野菜類(えだまめ、そらまめ、グリーンピース、ほうれんそう、ブロッコリー、ニンニクなど)
グリシンの摂取のコツ
グリシンは牛スジや豚足、手羽先といった動物性コラーゲンや、エビやホタテといった魚介類に特に多く含まれていますが、これらの食品の毎日の摂取は難しいことも多いので、サプリメントで摂取するのが効率的です。
また、体温を下げて寝つきを良くする効果をもつグリシンは夕食時や就寝前に摂取するのがおすすめです。
トリプトファンは睡眠に誘うホルモンの「メラトニン」の生成に必要な栄養素
GABAにはリラックス効果やストレスを軽減させる効果がある
グリシンには体温を下げて、寝つきを良くするとともに、深い睡眠に入りやすくなる効果がある
2. 睡眠の質を上げる食べ物3選!
2-1 トマト
トマトには、強力な抗酸化作用を持つリコピン、風邪防止に有効なビタミンCやその他ビタミンのほか、カリウム、β-カロテン、食物繊維などの栄養素が含まれており、「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言われるほど栄養豊富な野菜です。
また、リラックス効果やストレス軽減効果を持つGABAも含んでいます。
そんな栄養豊富なトマトに含まれる栄養素の一つ「カリウム」には、体温を下げる働きがあります。
カリウムによって深部体温が下がりやすくなることで寝つきが良くなり、ぐっすり眠ることができます。
トマトを摂取するときのコツ
トマトを単体で食べる場合、食感が苦手という方も多いと思います。
そこで、トマトの味自体に抵抗がない方や、手軽に摂取したいという方は、トマトジュースを飲むのが良いでしょう。
トマトを摂取するタイミングは、睡眠の質を上げるという目的の場合は夕食時〜就寝前が良いです。
カリウムの効果で体温が下がっていくにつき、気持ちよく寝ることができます。
就寝1時間前にトマトジュースを1杯飲む、ということを習慣にするのがおすすめです。
注意点として、無理に摂取しすぎるとお腹を壊してしまう恐れがあります。
2-2 ヨーグルト
睡眠に重要なホルモンであるメラトニンは、その材料となるセロトニンの95%が腸で作られています。
セロトニンの生成を促すのが「善玉菌」といった腸内細菌なのですが、腸内細菌の働きを促すには、腸内環境が整っていることが重要になります。
腸内環境を整えることでメラトニンが生成されやすくなり、睡眠の質も上がりやすくなります。
そこで、腸内環境を整える食品としておすすめなのがヨーグルトです。
腸内環境を整えるには腸内の善玉菌の割合を多くして、悪玉菌を減らすことが必要になりますが、ヨーグルトには「ビフィズス菌」「乳酸菌」といった善玉菌を多く含んでいるので、腸内の善玉菌を増やすことができます。
また、ヨーグルトには上述したトリプトファンも含まれています。
腸内環境を整えるだけでなく、ヨーグルト自身もセロトニンの材料となるので効果的です。
夜間時にメラトニンが増えるよう、朝食時に摂るのがおすすめです。
2-3 ハチミツ
ハチミツも睡眠に良い食べ物の一つです。
私たちの身体は、血糖値が低くなると交感神経が働いて血糖値を上げようとし、反対に高くなると副交感神経が働いて下げようとします。
ハチミツには血糖値の上昇を緩やかにし、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの分泌を一定に保つことで、睡眠時に最適な血糖値を維持してくれるという効果があります。
また、ハチミツに含まれる「ブドウ糖」や「果糖」は胃に優しく、栄養の身体への吸収がスムーズであり、中でも脳のエネルギー源となるブドウ糖は、神経や細胞の修復に必要な成長ホルモンの分泌等で睡眠時に消費される脳のエネルギーを補給することができるので、睡眠時の疲労回復効果を高めます。
食べ方について
おすすめの食べ方は、就寝する1時間前に、大さじ1〜2杯をそのまま食べるという方法です。
ハチミツの成分は熱に弱く、ハチミツのもつ効果を最大限に得るためには、そのまま食べるのが望ましいです。
就寝前のほか、ハチミツにもトリプトファンが含まれているので、朝食時に摂取するのも良いでしょう。
なお、ハチミツをそのまま食べることに抵抗がある方は、ヨーグルトにかけて食べたり、40℃以下のぬるま湯に溶かして食べたりするのが良いでしょう。
ただし、糖質を含むものと一緒にとるとインスリンの分泌を促してしまう可能性があるので、「無糖」または「低糖」と書かれた食品と合わせるようにしましょう。
選び方
ハチミツには「純粋蜂蜜」、「精製蜂蜜」、「加糖蜂蜜」の3種類がありますが、ハチミツの効果を重視するならば、天然成分100%の純粋蜂蜜を選ぶのが良いでしょう。
1歳未満の乳児の摂取は禁止
1歳未満の乳児がハチミツを摂取すると「乳児ポツリヌス症」を起こす恐れがあり、大変危険なので絶対に摂取させないようにしましょう。
トマトは栄養豊富で、体温を下げる効果を持つカリウムを含んでいるのでおすすめ
ヨーグルトには腸内環境を整える効果があり、メラトニンの材料となるセロトニンの腸内での合成を促すのでおすすめ
ハチミツには睡眠時に最適な血糖値を保つ効果があり、睡眠時に消費される脳のエネルギー源にもなるのでおすすめ
3. 食事をとるタイミングとコツ
3-1 朝食は起床後1時間以内
朝食には体内時計をリセットさせる効果があります。
体内時計には脳にある親時計と全身の細胞の1つ1つにある子時計の2種類があり、親時計は目を通して入ってきた光を浴びてリセットされ新しく体内リズムを刻み始めますが、子時計は光に関係なく朝食によってリセットされます。
親時計が正しくリセットされていても、子時計がリセットされていないと身体の動きが鈍ったり、不調を感じたりすることがあります。
体内時計をリセットしやすくするには、なるべく朝起きてすぐに朝食を食べることが大切で、遅くとも起床後1時間以内が良いとされています。
親時計と子時計を一緒にリセットさせるために、光をたくさん浴びながら朝食をとると良いでしょう。
3-2 昼食は朝食から5〜6時間後
昼食は、朝食から5〜6時間後を目安に食べるのが良いとされています。
また、胃は12時頃から14時くらいまでをピークに活発に活動するので、肉や魚等のタンパク質をとる場合や、重いものをガッツリ食べるといった場合にはこの時間帯がおすすめです。
3-3 夕食は就寝3時間前には済ませよう
夕食は時間帯に注意しましょう。食事をとった後にすぐ寝てしまうと睡眠の質が悪くなります。
食べ物が胃の中に入ると、消化吸収のため平均で3時間は胃が活性化するとされています。
その間は脳も内臓も起きて働くことになるので十分に休むことができず、深い睡眠をとることができなくなってしまいます。
できれば夕食は就寝前3時間には済ませるようにしましょう。
また、肉や天ぷらといった、脂肪や油を多く含むものは更に消化吸収に時間がかかるので気をつけましょう。
食事がどうしても遅くなる場合は「分食」がおすすめ
仕事の都合等で夕食が遅くなりがちな方は、夕食を小分けにする「分食」がおすすめです。
夕方6時くらいに、おにぎり等の主食系のものやカロリーの高いものを食べて、後でスープやサラダ等の副食系のものを中心に食べると良いでしょう。
3-4 夜食をとる場合
夕食を早い時間にとってしまった場合や、空腹でどうしても眠気がやってこないという場合は軽く夜食をとると良いでしょう。
夕食後は時間を空けたほうが良いと上述しましたが、お腹が空いたまま長くいることも睡眠の質を悪くしてしまう恐れがあります。
空腹の状態が続くと、覚醒に関わる「オレキシン」というホルモンが体内で増えます。
このオレキシンは興奮作用があり、交感神経を刺激するので寝つきが悪くなってしまうのです。
食事の内容は、おかゆやうどん、スープ、バナナといった消化の良いものがおすすめです。一部のインスタント食品やスナック菓子といった脂肪や油分が多いものは控えましょう。
夜食をとった場合は、最低でも就寝まで1時間は時間を空けましょう。
朝食は体内時計をリセットする効果があり、起床後1時間以内にとると良い
昼食は朝食から5〜6時間後を目安にする
夕食は夜の睡眠に影響が出ないように、就寝3時間前には済ませる
空腹の状態が続くと寝つきが悪くなるので、どうしてもというときは夜食をとると良い。夜食は脂っこいものを避け、夜食をとった後は最低でも就寝まで1時間は空ける
4. 睡眠に効果的な食事のコツ
4-1 バランスの良い食事を心がける
食事はバランス良くとるように気をつけ、偏った食事は控えましょう。
睡眠に良いとされる食材ばかりを食べる、などといった食生活で摂取される栄養素に偏りが生じてしまうと、身体や精神に不調をきたす恐れがあるので要注意です。
4-2 食事はゆっくり、よく噛んで食べよう
食事をするときはできるだけよく噛んで、ゆっくりとるようにしましょう。
よく噛んで食べることで、栄養素の吸収が促されます。
また、糖質を含むものは、ゆっくり食べることで血糖値が上がりにくくなります。
早食いをすると血糖値を急激に上昇させ、覚醒ホルモンのオレキシンの分泌も低下してしまうので、食後の急な眠気につながるとされています。
眠気による午後遅くの居眠りや夕食後すぐの就寝は、睡眠の質を下げてしまいます。
他にも、夕食をよく噛んでゆっくり食べると、満腹中枢を刺激して満足感を得られやすく、その後の就寝前の間食を防ぐこともできるので、睡眠の質の低下や肥満のリスクを減らすことができます。
できれば、1回の食事には最低でも15分程度の時間をとるようにすると良いでしょう。
4-3 食事の効果を意識しよう(プラセボ効果)
「プラセボ効果(プラシーボ効果)」とは「偽薬効果」とも呼ばれ、有効成分が入っていない偽の薬を飲んでも、まるで本物の薬のような効果が表れることをいいます。
詳しいメカニズムは解明されていませんが、一般的にプラセボ効果は思い込みや期待感からの暗示によるものといわれています。
そこで、これを食事でも応用してみましょう。
テレビ等のメディアで「〇〇を食べると精がつく!」などといった情報を見て、実際にその食品を食べてみると元気が湧いてきた、というような体験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
そのような体験には、ある種のプラセボ効果が働いている可能性があるかもしれません。
プラセボ効果にはネガティブな効果もあり、「この薬を飲んで効くわけがない」と思って飲むと、本当に効果があるものでも表れにくくなることがあるといわれています。
食事においては、「これを食べてよく寝られるわけがない」と思いながら食べるよりも、「これを食べると、寝つきが良くなって深く眠られる!」と意識しながら食べると、より良い効果を得ることができるかもしれません。
4-4 足りない栄養素はサプリメントで補うのもおすすめ
いくら睡眠に良い栄養素とはいっても、毎日それらの栄養素をバランス良く含む食事をとることは難しいですし、献立等を考えるのも面倒と思う方も多いでしょう。
その場合は、サプリメント等で足りない栄養素を補うこともおすすめです。
市場には「寝つきが良くなる」「疲れが取れにくい人へ」といった、睡眠の悩みや目的に応じたサプリメントも多いので、それを選んでみるのも良いでしょう。
なお、これらのサプリメントを選ぶ際は、原材料や含有成分等の表示や、注意点をよく読むようにすることが大切です。
摂取する栄養素が偏ると身体や精神に不調をきたす恐れがあるので、バランスの良い食事を心がける
食事はよく噛んでゆっくり食べることで栄養素の吸収が促され、血糖値の急上昇による眠気を防ぐことができる
食事の際は、その食材のもつ効果を意識しながら食べることで、プラセボ効果を高めることができる
足りない栄養素は、サプリメントで補うこともおすすめ
5. 食生活の乱れと睡眠との関係
5-1 高脂肪の食事が睡眠の質を下げる
高脂肪の食事は睡眠の質を下げる恐れがある、ということが様々な研究から明らかになっています。
2016年 コロンビア大学の研究
2016年、コロンビア大学の研究によると、※4
30〜45歳の成人の男女26人に、4日間指定した健康的な食事を摂ってもらった後、5日目に食事を自由に選択してもらい、その食事内容によって個人の睡眠にどのような影響が生じるか観察したところ、食物繊維が豊富で脂肪と糖分が少ない食事を選択した人は眠りにつくのが早く、睡眠も深くなり、一方食物繊維が少なく脂肪と糖分が多い食事をした人は眠りにつくのが遅く、睡眠も浅くなったということがわかりました。
2007年 ノースウェスタン大学の研究
また2007年、ノースウェスタン大学が行ったマウスを使った実験において、※5
マウスを2つのグループに分け、6週間にわたり、片方のグループには通常の食事を与え、もう一方のグループには高脂肪・高カロリーの食事を与えたところ、2週間後、高脂肪の食事を与えられたグループは普段なら休息か睡眠をとる時間帯に食事を始めるということが確認され、実験を行った研究チームはこのことから、カロリーの過剰摂取は体内時計を乱す恐れがあると結論づけました。
高脂肪の食事は睡眠を妨げるだけでなく、体内時計も乱してしまう恐れがあります。
習慣的に高脂肪や高カロリーの食事を摂っていて、睡眠に問題があるという方は、食生活を改善するようにしましょう。
理想的な食事は、コロンビア大学の研究を参考にすると、「食物繊維が豊富で、脂肪と糖分が少ない食事」がベストと考えられます。
5-2 睡眠不足が食生活の乱れにつながる
高脂肪の食事が睡眠の質を下げる、という研究をご紹介しましたが、睡眠不足の状態だと、食事の量が増え、高脂肪のものを食べたくなるということも研究でわかっています。
2004年 スタンフォード大学の研究
食欲に関わるホルモンに、「グレリン」と「レプチン」と呼ばれるものがあります。 グレリンは食欲を増進する働きをもち、一方レプチンは食欲を抑える働きをもっています。
2004年にスタンフォード大学がボランティアの参加者およそ1000人に対して行った研究によると、※6
平均睡眠時間が5時間以下の人は8時間の人と比べて血中のグレリンが14.9%増加し、逆に血中のレプチンが15.5%減少するということがわかり、睡眠不足が食欲の増進につながることが示唆されました。
2018年 アリゾナ大学の研究
また、アリゾナ大学の研究において、※7
3105人のアメリカ人に対して行った調査で、60%が夜間にスナック菓子といったおやつを摂取する習慣があり、3分の2が、睡眠不足の状態だと更にジャンクフードが欲しくなってしまうことがあると回答し、睡眠不足と高脂肪の食事に関係があるということがわかりました。
夜更かししているとお腹が空いてきて、ついつい甘いお菓子やカップラーメンに手を伸ばしてしまった、という経験がある方もいるのではないでしょうか。
これらの研究から、睡眠不足の状態だと高脂肪の食事が欲しくなる上に食事の量も増えてしまうといった食生活の乱れにつながり、高脂肪の食事が睡眠の質を下げて睡眠不足の状態をもたらす、という悪循環に陥る可能性があるということが考えられます。
この悪循環は、肥満や生活習慣病のリスクを大きく高め、健康を損ないます。
食生活を改善するには、食材等を見直すだけではなく、自分の睡眠についても見直す必要があるということを意識しましょう。
高脂肪の食事のとり過ぎは寝つきを悪くし、睡眠を浅くさせるほか、体内時計を乱す恐れがある
睡眠不足の状態だと食欲が増進し、さらに高脂肪・高カロリーなものが欲しくなるということがわかっている
6. まとめ
睡眠に良い食べ物と食事のコツについてご紹介しました。
食事においては、必須アミノ酸であるトリプトファンは毎日食事から摂るようにして、高脂肪の食事は習慣化しないようにしましょう。
また、実験をご紹介した通り、食習慣と睡眠習慣には深い関係があります。
良い食生活から良い睡眠が生まれ、良い睡眠をとると食生活が乱れるリスクを減らすことができるので、食事と睡眠、両方を意識していきましょう。
※1 ギャバ・ストレス研究センター http://www.gabastress.jp/result/2018/03/20180319.html 2021年07月28日アクセス
※2 藤林真美・神谷智康・高垣欣也・森谷敏夫 GABA 経口摂取による自律神経活動の活性化. 日栄・食糧会誌. 61, 129-133, (2008).
※3 Yamadera W, Inagawa K, Chiba S, Bannai M, Takahashi M, Nakayama K. Glycine ingestion improves subjective sleep quality in human volunteers, correlating with polysomnographic changes Sleep and Biological Rhythms 2007; 5: 126-131
※4 St-Onge MP et al. Fiber and Saturated Fat Are Associated with Sleep Arousals and Slow Wave Sleep. J Clin Sleep Med. 2016 Jan;12(1):19-24.
※5 Kohsake, A. et al. High-fat diet disrupts behavioral and molecular circadian rhythms in mice. Cell Metab. 6, 411-421 (2007).
※6 Taheri S, Lin L, Austin D, Young T, Mignot E: Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index. PLoS Medicine 2004;1:210-7.
※7 THE UNIVERCITY OF ARIZONA https://opa.uahs.arizona.edu/newsroom/news/2018/ua-study-finds-link-between-sleep-loss-nighttime-snacking-junk-food-cravings-and 2021年07月28日アクセス