【良質な睡眠には入浴が効果的】睡眠の質を上げるための入浴法をご紹介!
寒い時期は毎日でも行いたい入浴。
入浴は習慣としてはもちろんですが、疲労回復や美容目的で積極的に行う方が多いかもしれません。
しかし、「睡眠の質を上げる」という目的での意識的な入浴はあまり行われていないのではないでしょうか。
入浴は効果的に行うことで人の持つ生体リズムに働きかけ、快眠をサポートしてくれます。
この記事では、睡眠に効果的な入浴のコツや入浴時の注意点等についてご紹介します。
1. 睡眠と入浴の関係
1-1 睡眠と体温の関係
私たちは毎日ほぼ同じ時間帯に眠り、一定の時間で自然に目が覚めるというリズムを刻んでいます。
そして、私たちの身体はこの睡眠と覚醒のリズムを整えるために生体機能を働かせています。
その生体機能の一つが体温であり、とりわけ脳や内臓などの身体の内部の温度である「深部体温」が重要です。
体温にも一定のリズムがあり、一般的に活動的な日中は体温は上がり、休息する夜になると手足の末端から熱を逃がし、体温を下げます。
深部体温が低下すると人は自然と眠気が強くなるので、そのままぐっすり眠ることができます。
つまり、自然な良い眠りを促すには深部体温の低下がポイントであり、就寝前はしっかり深部体温を下げる必要があるということです。
そして、深部体温の低下をサポートする効果的な方法が「入浴」です。
1-2 入浴が深部体温の低下をサポート
元々人間は恒温動物のため、人の身体は大幅な体温変化が起こらないようになっており、特に深部体温はなかなか変動することがありません。
しかし、入浴することによって深部体温が一時的に急上昇することが研究により分かっています※。
深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとする特徴を持っているため、入浴で急上昇させた分だけ効果的に深部体温を大きく下げることができます。
就寝前に自然な眠気を引き出すには、深部体温をしっかり下げておくことが重要。
入浴によって深部体温の高低差を作り出すことで、深部体温が下がってくる段階で自然な眠気を引き起こすことができる。
2. 快眠のための入浴のコツ
2-1 38〜40℃で15〜20分浸かる
入浴は、38〜40℃程度のぬるま湯で、15〜20分浸かるのがおすすめです。
少しぬるめのお湯に浸かることによって、血圧が下がって脈拍もゆっくりと落ち着き、副交感神経が優位になるので、リラックスすることができます。ぬるま湯では熱の刺激による血圧の急な変化を予防できるので、血管や心臓などへの負担を減らせます。
また、15〜20分程度浸かることで身体が芯まで温まり、深部体温を上げることができます。
ただし、42℃以上の熱めのお湯は注意です。
交感神経が刺激されて脳や身体が興奮状態となってしまうので、リラックスすることができなくなります。
また体温が上がりすぎると、就寝時から起床時にかけて体温がスムーズに下がりにくくもなるので、入浴後の睡眠に悪影響を与えてしまいます。
熱いお湯は心身を活発にさせる効果があるとされていますが、就寝前の入浴には不向きです。
また、お湯が熱いと血圧が上がるため、後述の「ヒートショック」にも注意する必要があります。
2-2 就寝前の60分〜90分前に済ませる
入浴のタイミングですが、就寝する60〜90分前までに済ませておくのがおすすめです。
上述した通り、入浴によって上昇した深部体温は元の体温に戻ろうとして体温を徐々に下げていきます。
この上昇した体温が発汗等の熱放出で元の体温に戻り、さらに下降に転じるまでに要する時間がおよそ60〜90分になるのです。
なお、どうしても42℃以上の熱めの入浴が良いという場合は、上記の時間でも深部体温が下がりきらないことがあるので、上記の時間+30分以上の時間を空けると良いでしょう。
入浴後すぐの就寝はNGです。
睡眠は入眠直後の最初の90分間が一番深くなるといわれています。この重要なタイミングで体温が下がりきっていないと浅い眠りとなってしまい、全体的な睡眠の質が低下してしまいます。
身体が温まっている状態で眠りたい方も多いかもしれませんが、時間を空けて深部体温をしっかり下げておくようにしましょう。
自分の就寝時間から逆算して、入浴時間を決めてみましょう。
2-3 入浴剤で効率的に快眠効果を上げる
入浴剤を効果的に取り入れることで、入浴の効果や睡眠の質を高めることができます。
例えば炭酸系の入浴剤の場合、お湯の中で発生した炭酸ガスが身体に作用し、血管が広がって血行が良くなるとともに、通常のお湯と比べて身体が温まるスピードが早くなります。
身体が効率的に温まると入浴時間もある程度短縮できるので、忙しい方にもおすすめです。
他にも、リラックス作用のある成分が含まれているものや、お湯に溶け出す際に発生する香りでアロマテラピー効果を得ることができるもの等、様々な種類の入浴剤があるので、気になるものがあれば試してみると良いでしょう。
入浴の楽しみにすると、準備するまでが面倒で苦手という方の入浴のモチベーションにも繋がります。
お湯の温度は、副交感神経を優位にしてリラックスするために38℃〜40℃くらいのぬるめが良い。また、身体を芯まで温めるために15〜20分程度浸かると良い。
入浴は、深部体温が下がる時間を確保するために就寝する60〜90分前に済ませる。
入浴剤を使用することで、効果的な入浴の効果や睡眠の質の向上が期待できるのでおすすめ。
3. 入浴における注意点
3-1 入浴前・入浴後の水分補給を心がける
入浴時に脱水症状などのトラブルが起きないように、入浴前に水分を摂取しておきましょう。
また、入浴後の水分補給も重要です。
入浴後の水分補給は、入浴時に汗で失われた水分を補うとともに、睡眠時の汗を促すためにも必要になります。
最低コップ一杯程度の水分を摂取しましょう。
入浴後は冷たい牛乳を一気飲みしたくなる方も多いと思いますが、温めた身体を急に冷やさないように、常温か温かい飲み物がおすすめです。
入浴後から就寝前に飲むおすすめの飲み物としては、胃腸に刺激を与えにくい「白湯」や、リラックス効果を持つものもある「ハーブティー」が良いでしょう。
なお、覚醒効果のあるカフェインやアルコールが含まれているものは就寝前の飲み物としてはNGなので避けましょう。
3-2 入浴中の電子機器の使用は控える
入浴中はとにかくリラックスすることが大切です。
スマートフォンやタブレット端末の操作、テレビを見るといったことは交感神経が刺激され、脳が活性化しリラックスしづらくなります。
リラックスするための音楽を聞くための使用にとどめておき、画面を見続けるといったことは控えましょう。
3-3 入浴後に身体を急に冷やさない
深部体温の低下が快眠のポイントとお伝えしましたが、水滴がついた身体で寒い室内に入る等、身体を急激に冷やすことはNGです。
人の身体は冷えすぎるとそれ以上体温を奪われないように血管を収縮させ、体内に熱を閉じ込めようとします。
その状態では就寝しても熱放出が上手く行われず、深部体温が下がりにくくなるので睡眠の質が低下してしまいます。
身体についた水滴は温かい脱衣所や浴室内でしっかり拭く、入浴後は衣服で身体を保温するといったことを心がけましょう。
入浴中は汗をかくので、入浴前後には水分補給が大切。最低でもコップ一杯分の水分を摂取すると良い。
入浴中のスマホ等の操作やテレビの視聴は、交感神経を刺激しリラックスできなくなるので控える。
入浴後に身体を冷やしすぎると就寝時の体温調節が上手く機能しなくなるので、衣類等で身体を保温することを心がける。
4. ヒートショックに注意!
もう一つの入浴の注意点として、寒い時期に特に起こりやすい「ヒートショック」の危険と対策についてご紹介します。
4-1 ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な温度変化によって身体に大きな負担がかかることをいいます。
家の中においては、暖かいリビングから寒い浴室、トイレ等の室内に入った時に起こりやすくなります。
入浴の場合、寒い脱衣所で裸になると血管が収縮し血圧が急上昇します。
また、いきなりお湯に浸かると、熱いお湯では血圧はさらに高くなり、ぬるめのお湯では逆に血管が広がり血圧が急に低下してしまいます。
このような急な血圧の変化により血管に負担がかかると、脳卒中や心筋梗塞、不整脈といった病気のリスクが高まります。
また、血圧の急激な低下によって意識を失ってしまうと、そのまま浴槽内で溺れてしまうこともあります。
気温や室内の温度変化が激しくなる秋・冬は特に注意する必要があります。
4-2 ヒートショックの対策
① 入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
暖房を点けたり、持ち運びのできるヒーターを置いたりといった対策を行い、他の暖かい部屋との温度差を小さくしましょう。
浴槽のフタを利用するといった対策方法もあります。
浴槽にフタをしたままお湯を入れ、ある程度お湯が溜まってきた段階でフタを外し、蒸気によって浴室内や脱衣所を温めるという方法です。フタをしておくとお湯の保温にもなるのでおすすめです。入浴中に使用するのも良いでしょう。
また、冷たい空気が入ってくる可能性があるので、換気扇はオフにしておくと良いでしょう。
② 飲酒後の入浴は控える
アルコールを摂取すると血管が広がり血圧が低下するため、摂取していない状態と比べるとヒートショックを起こしやすくなります。
飲酒後の入浴は控えましょう。
③ 掛け湯をする
湯船に浸かる前に、必ず掛け湯をして身体をお湯に慣れさせておきましょう。
掛け湯をする際は、心臓から離れた位置からお湯に慣れさせていくのが良いとされているので、右の足元や手先から順にお湯をかけていくのがおすすめです。
④ いきなり湯船に全身を浸からせない
いきなり全身をお湯に沈めてしまうと、熱による刺激や水圧によって血管や心臓に急な圧力がかかってしまうので避けましょう。
まずは足元からみぞおちのあたりまで浸かり、徐々に身体をお湯に慣らしていきながら肩まで浸かるようにしましょう。
⑤ 湯船から急に立ち上がらない
湯船に浸かっている状態は全身に水圧がかかっており、血圧が上がります。ここで急に立ち上がると血圧が一気に下がり、血管に負担がかかってしまいます。
慌てず、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。
ヒートショックとは急激な温度変化によって身体に負担がかかることをいい、血圧の変化によって脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる恐れがある。
ヒートショックの対策として、入浴前においては脱衣所や浴室を暖めておく、飲酒を控えるといった対策がある。
入浴中においては、お湯に浸かる前に掛け湯をする、湯船からはゆっくり出入りするといった対策を心がけると良い。
5. 入浴する時間がない場合の対処法
5-1 シャワー浴
入浴後は就寝までに60〜90分程度時間を空けると良いですが、忙しくてそんなに時間がない方も多いでしょう。そういった方はシャワー浴が良いでしょう。
シャワー浴は入浴よりも深部体温がそれほど上がらないので、体温が元に戻る時間も短くすみます。
ただし、入浴するよりも大きな睡眠効果が得られないことには注意です。
入浴と同様に38〜40℃程度のぬるめのお湯でシャワーを浴びると良いでしょう。
5〜10分程度で素早く済ませて、身体を冷やさないようにしましょう。
5-2 足湯
時短の方法として、足湯もおすすめです。
両足が収まるサイズの洗面器等にお湯を入れ、足をつけるだけで簡単に行うことができます。
足湯も38〜40℃程度のお湯で、15〜20分程度浸けるのが良いでしょう。
ただ足湯は容器の大きさによってはお湯が冷めやすいので、上記より+1℃温度を上げるか、差し湯の準備をすると良いでしょう。
人の身体は体内の熱を逃すために手足の末端の温度を上げるという性質がありますが、足湯で身体の末端を直接温めることで、温まった末端の熱放出を促し、間接的に深部体温の低下させることができます。
また、足湯にはリラックス効果や冷え防止といった効果も期待できます。
髪や身体を洗わないと気持ち悪いという方は、シャワー浴をしながら足湯をすると良いでしょう。
足湯をしながら髪や身体を洗えば、シャンプー途中等で身体が急に冷えることも予防できます。
足湯は手が空くので、足湯をしながら歯磨き等を済ませると就寝までの時短になります。
また、読書やハーブティー等も楽しみながら行えることもおすすめです。
時間がない場合は、38〜40℃のお湯で5〜10分程度浴びるシャワー浴がおすすめ。
時短には足湯も効果的。両足が収まるサイズの洗面器等に38〜40℃のお湯に15〜20分程度浸けると良い。
6. まとめ
睡眠の質を上げるための入浴のコツと注意点についてご紹介しました。
入浴によって深部体温の高低差を作ることでぐっすり眠ることができます。
38〜40℃程度のぬるま湯で、15〜20分程度湯船に浸かるようにしましょう。
また、入浴中はリラックスすることを意識しましょう。
冬においては、建物内においても急な温度変化があります。
急な温度変化は身体に負担をかけ、ヒートショックといったトラブルを引き起こしてしまうので対策を心がけましょう。
※ PRESIDENT Online "認知症引き金物質除去する睡眠「黄金の90分」" https://president.jp/articles/-/29465 2021年12月23日アクセス