【睡眠の専門家に聞く】「靴下を履いて寝る」に注意!寒い日の正しい体温調節とは?
寒い季節、特に冷え性だという方の中には、冷え対策として靴下を履いて寝ることが多い方もいらっしゃるのではないでしょうか?
たしかに寒い季節は足が冷えてしまってなかなか眠れない、ということもありますよね。 靴下を履いて寝れば足元が暖かくなり、冷えが解消されてぐっすり眠れそうです。
しかし靴下を履いて寝るのは、かえって睡眠の質が悪くなる恐れがある「NG行動」なのです。
今回は、一般社団法人睡眠スパ協会代表理事で、睡眠アプリ「Somnus」の監修を務める金沢優治氏に、靴下を履いたまま寝ることについてお聞きしました。
就寝時に靴下を履いて寝ることのデメリット、寒い日の冷え対策についてご紹介します。
その後、自分自身の睡眠障害の経験を活かし睡眠理論とマッサージ理論を掛け合わせ睡眠リズムを整える“睡眠スパ”を自ら開発し2016年に企業。
睡眠の質を向上させるマッサージと最適な眠り習慣のサポート提供。
2020年には脳の思考タイプとストレス状態が可視化できるB-brain上級インストラクター取得。
同年からは睡眠だけではなくストレスの状態・原因・解決までを企業に提供する『ナップヘルスケア』を開始。
大きく影響のある《ストレス》を隠れた部分まで見つけ出し継続的解決をリスクヘッジとし、企業と従業員が共に満足する働き方改革と企業価値の向上提供中。
公私ともにハイパフォーマンスで充実した毎日を過ごしてもらう事を目標に提供場所《ナップヘルスケアステーション》を拡大中。
1. 睡眠と体温の関係
1-1 「深部体温」を下げると寝つきや睡眠の質が良くなる
睡眠の仕組みについて、金沢氏は、「人間の脳には深部体温(脳を含めた身体の内臓の温度)が下がり、外の気温との差が生じるにつれ眠気が生じる、という働きがあります。つまり、適切な眠気を発生させるためには、就寝前にこの深部体温を下げる必要があるのです」と話します。
また、深部体温を下げることは寝つきを良くするだけではなく、睡眠の質においても大切だそうです。
「ノンレム睡眠、その中でも深い睡眠(徐波睡眠)では、特に体温が低下します。※1 そしてこの深い睡眠は睡眠の前半に多く現れます。※2 つまり、良質で深い睡眠をとるには、この深部体温を寝る直前にしっかり下げることが必要になるのです」。
人が眠くなるには深部体温を下げて、外の気温との温度差を発生させる必要がある
深部体温を下げることでノンレム睡眠の深い睡眠を得られやすくなる
2. 寝る時に靴下を履くデメリット
2-1 深部体温が下がりにくくなる
深部体温を下げるには、皮膚表面から体内の熱を外に放出する必要があります。
この熱放射は手足といった身体の末端で多く行われます。
手足に高温の血液を集中させ、皮膚を通して外気に触れさせることで血液の温度を下げます。
そうして冷たくなった血液を再度体内に循環させることで体全体の温度を下げるのです。
就寝時に靴下を履いたままでいると、熱が閉じ込められてしまい足先からの熱放射が妨げられるので、深部体温が下がりにくくなってしまい、良い睡眠が得られなくなります。
2-2 身体が冷えすぎてしまう
靴下を履いていると深部体温が下がりにくくなりますが、長時間履いていると逆に体温が下がりすぎてしまう恐れがあります。
靴下は肌に密着しており、寝ている間に特に足の裏が汗をたくさんかきます。
汗をかき過ぎると体内の熱を過剰に放出してしまうため、どんどん体が冷えていくのです。
体温が下がり過ぎると体が緊張して交感神経が刺激されるので、目が覚めてしまいます。
冷えた手足が汗をかくことによってさらに熱を奪われると、冷え性がさらに悪化してしまうこともあります。
2-3 不快感
上述の通り靴下を長時間履いたまま寝ていると熱がこもりやすく、蒸れるので不快に感じて睡眠の妨げになります。
また締め付けのきつい靴下や、足のむくみをとるという理由で着圧ソックスを履いていると、寝ているときに脱ぎたくなってもなかなか脱げず、夜中に目が覚めてしまうことも起きてしまいます。
靴下を履いていると深部体温が下がりにくく、寝つきが悪くなる
靴下を長時間履いていると体温が下がりすぎ、夜中に目を覚ましてしまう恐れがある
靴下は熱がこもり、蒸れるので不快感で睡眠が妨げられる
3. 冷えを解消して睡眠の質を上げる対処法
このように就寝時に靴下を履いて身体の末端を過度に保温すると寝つきや睡眠の質に悪影響を及ぼします。
とはいえ、手足が冷えたままでも眠りにつくことは難しいのも事実です。
身体の末端が冷えすぎていると血行が悪くなるので熱放射がうまく働かず寝つきが悪くなります。
実際に、冷え性の方が不眠になりやすいという研究報告もあります。※3
つまり、就寝時には手足が温まりすぎても、逆に冷えすぎてもいけないということです。
体温を上手く調節して良い睡眠を得るにはどうすれば良いのでしょうか?
金沢氏に毎日の生活の中でできる対処法を3つお聞きしました。
3-1 夕方にジョギング等の軽い運動を行う
軽く体を動かすことで体温や心拍数を上げて血行を良くします。
注意点は夕方から夜の間、就寝前3時間前には終わらせることです。
心拍数が上がると交感神経が刺激され、運動後しばらくは目が冴えた状態が続くので、就寝前に行うと寝つきが悪くなります。
3-2 寝る前にぬるま湯で、足湯を行う
足湯は全身浴よりも手軽なので、時間がないという方にもおすすめです。
またリラックス効果もあるので、足湯後スムーズに就寝することができます。
お湯の温度は30℃~40℃の手で触って熱くない程度で、10分~15分ほど足を浸けるのが良いでしょう。
アロマを加えると更にリラックス効果を高めることができます。
3-3 就寝前の軽いストレッチ
就寝前に軽いストレッチをすると血行が良くなります。
リラックスしながら行うことで副交感神経を優位にさせ、より眠気を促すことができます。
これら3つの対処法に共通するポイントは、夕方から就寝前に身体を温めることです。一度深部体温を上げ、下げるだけの体温の幅を作ることで効率的に深部体温を下げることができます。
また、副交感神経を優位にすると血行が良くなるので適切な眠気を生じさせることにもつながります。
軽い運動は就寝3時間前までに終わらせる
足湯の温度は30℃~40℃のぬるま湯、時間は10分~15分程度が良い
軽いストレッチは就寝前に、リラックスしながら行う
4. 寝室や布団を暖かくしておこう!
運動や足湯で体を温めても、寝室がとても寒かったり、布団の中が冷たかったりすると体が強ばり、交感神経が刺激されて目が覚めてしまうことや、血管が収縮して血行が悪くなり、熱放出がうまくいかなくなることがあります。
そこで体が冷えすぎないよう、就寝前にあらかじめ寝室の暖房をつけておく、布団の中を電気毛布や湯たんぽで温めておく等の工夫をしておきましょう。※4 布団乾燥機もおすすめです。
ただし、電気毛布のスイッチを入れたまま眠ってしまうと体温調節がうまくいかず、深部体温が下がりにくくなり睡眠の質が悪くなるので注意です。布団の中に入るときは電気毛布のスイッチは切っておくようにしましょう。
就寝前に寝室や布団の中を温めておくと体を冷やさず眠りに就くことができる
5. まとめ
体温を上手く調節するために大切なのは、軽い運動・入浴(足湯)・ストレッチで身体を適度に温めて、就寝時に深部体温が下がるように体温の幅を作ることです。また、就寝時に合わせて寝室や布団を温めておくことも忘れずに。
とても寒い日が続き、体も冷えやすくなる時期ですが、靴下を履くことは控えるようにしましょう。
今回ご紹介した対処法を毎日の生活に取り込むことで、ぐっすり眠れるようになります。
是非実践してみてください!
※1 西川桃子, 我部山キヨ子: 「冷え症の定義,測定,特徴および妊婦の冷え症に関する
文献レビューと今後の研究の方向性」京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 : 健康科学 : health science (2010), 6: 57-65
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/108552/1/KenkoKagaku_6_57.pdf
※2 亀井雄一, 内山真: 快眠法. Modern Physician 25(1): 55-59, 2005
※3 名嘉村博, 「良い眠り 良い人生 3」『琉球新報』, 2008
※4 厚生労働省 "快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係"
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html 2020年1月7日アクセス